【対談】NTTグループのコンタクトセンターへNICEのソリューションを導入〜解消した課題とは?

株式会社NTTマーケティングアクトProCXは、コンタクトセンターなどの顧客接点で培ったノウハウとテクノロジーを活用し、顧客体験(CX)のデザインをサポートする企業。2021年10月、NICEは同社と日本国内初となるBPOパートナー契約を締結し、ナイスが提供する「Nexidia」と「Enlighten」をベースに、NTTマーケティングアクトProCXが培った品質管理の日本版汎用モデルや体系的な評価スキームを盛り込んだ、日本語に対応するアジア初のコンタクトセンター品質管理のDX基盤『ONE CONTACT Quality Management』のライセンス提供を開始した。この取り組みにより、コンタクトセンター・アワード2022「テクノロジー部門最優秀賞」を受賞するなど、業界から大きく注目されている。NTTマーケティングアクトProCXのキーパーソン2名とNICEの分析ソリューションの責任者が、両社のパートナーシップについて語った。(編集記者・森 英信)

<プロフィール>
元木 広幸 氏
株式会社NTTマーケティングアクトProCX
取締役
CXソリューション部 マネジメント部門長
コールセンターをマネジメントする部門の統括責任者。品質管理から業務の改善などを担当。

新谷 宣彦 氏
株式会社NTTマーケティングアクトProCX
CXソリューション部 西日本営業部長
西日本エリアの営業責任者。アウトソースの提案や新規ジョブの立ち上げ、サービス開発などを担当。

Philippe Mercier
NICE Ltd.
Vice President, Analytics, AI and Digital Asia Pacific
アジア太平洋地域におけるデータ分析、AI関連の責任者。

(左から)NICE Ltd. Vice President, Analytics, AI and Digital Asia Pacific Philippe Mercier、

株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 西日本営業部長 新谷 宣彦 氏、

株式会社NTTマーケティングアクトProCX 取締役/CXソリューション部 マネジメント部門長 元木 広幸 氏

エージェントや指導者の負担を減らしながら、応対品質を高めるにはAIが有効

―「ONE CONTACT Quality Management」の提供から1年が経過しました。NTTマーケティングアクトProCXとNICEのパートナーシップについての考えをお聞かせください。

Mercier NICEでは、AIなどの先進的なテクノロジーを駆使して、お客様の満足度を高めるようなお手伝いをしていけると思っています。NTTマーケティングアクトProCXとのパートナーシップは、アジアにおいて初めてのBPOパートナー契約です。新しいお客様に対し革新的なサービスを展開していくために非常に重要だと考えています。

NICE Nexidia/Enlightenの導入から1年が経過していますが、自動化された品質の高いマネジメントプロセスをお使いいただき、エージェントの皆様のパフォーマンス改善に役立て、お客様の満足度を高める品質マネジメントを実現できると考えています。

―NTTマーケティングアクトProCXがNICEのソリューションを活用するに至った背景についてお教えください。

元木氏 お客様満足度を高めるには、我々コンタクトセンター事業者の応対品質を高めることが必要です。しかし弊社は品質改善の取り組みに遅れをとっていましたので、非常に課題だと考えていました。応答品質の改善は、エージェントの応対を指導者がモニタリングして、それをもとにコーチングします。人手が足りないなか、時間もものすごくかかってしまいます。その問題を解決するために、AIを活用しようと考えたのです。

弊社は、応対品質を高めるための採点やコーチングなどのノウハウを10年以上かけて構築してきました。このノウハウをAIによって、大量かつ均質に実施する仕組みを作ろうと思ったのです。私たちは、お客様の感情を推し量ることも評価基準にしてきましたので、それを実現するためにいろいろなソリューションを試し、NICE Nexidiaなら実現できると思い、導入しました。

新谷氏 人が担う仕事と、機械が担う仕事を分けるために必要なものがAIやデジタルツールです。人は、コンシェルジュのような対応やクレームの処理など複雑な応対をしなければなりません。その人たちを高いレベルでサポートするために聞き起こしてコーチングしなければならないのは大変です。エージェントや指導者の皆さんを助けられないかという想いがあって、今回のシステムができました。

私はコンタクトセンターのアウトソースについてお客様に提案をする立場です。今の時代は、提案においてお客様の望む仕様に近づけるというよりは、いかに付加価値を付けられるかが非常に重要なポイントとなります。今回のシステムは、その点でも補ってくれたと考えています。

株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 西日本営業部長 新谷 宣彦 氏

―NTTマーケティングアクトProCXの課題に対して、どのような提案をされたのでしょうか。

Mercier 対応品質の管理に課題を抱え、それを解決するのにAIを使いたいというお考えは理解していました。相談を受けたとき、弊社にはNexidia/Enlightenがありましたので、問題を解決する素晴らしいコラボレーションができると考え、提案させていただきました。

日本市場に向け、両社が協力しながら16のAIモデルを作りました。お客様の体験に直接影響を与えるエージェントの行動を捉えるためのモデルです。これまでは、通話応対の評価をしようと思っても、少数のサンプリングしかできず、全通話については評価できませんでした。このシステムなら全通話を対象に短時間で評価ができます。このパートナーシップをお知りになった皆さんから、同じようにBPOを展開したいという声もいただいています。

使えば使うほど、従業員のエンゲージメントが高まり、新たな洞察も得られる

―導入から1年経過して、どのような効果を得られていますでしょうか。

元木氏 本格的な運用を始めてちょうど半年ほどです。弊社では8000名のエージェントが在籍しておりますが、そのうち1000名に導入が終わっているところです。皆さん、AIが人と同等の品質を出せるかどうかの疑念を抱く方が多いですが、体験いただくと驚かれます。本当に使えるものだという認知が高まっています。

AIによる評価によって、平均して1ポイントは改善ができるようになっていますが、AIモデルをさらに作って、システムを改善してもっと改善できるようにしていきたいです。

これまで指導者は、音声を一つ一つ聞いてモニタリングをしていましたが、その稼働が減少しましたので、コーチングにしっかり時間をかけることができるようになりました。エージェントとのコミュニケーションの時間が増えて、従業員満足度向上といった副次的な効果もあると感じています。

コーチングを受けるエージェント自身の納得度も高いです。今までは、数ある対応履歴のなかから月に1件だけ抜き出して評価していたので「いつもはうまくできているんだけどな……」といった疑念を抱かれることもありました。今回のシステムは全ての通話を評価しますので、全体を通じた強み・弱みが明確になります。弱みについてはすぐに再生して確認できるので、どう改善していいかがわかりやすく、頑張ろうと前向きな気持ちになれます。

株式会社NTTマーケティングアクトProCX 取締役/CXソリューション部 マネジメント部門長 元木 広幸 氏

Mercier プロセスの自動化によって、応対管理のコストを削減できる点もメリットの一つです。もう一つのメリットは、エージェントのエンゲージメントを高められることです。コンタクトセンターでは、エージェントの離職率を下げることが難しいと言われています。しかし、今回のソリューションによってエージェントの満足度も高まると考えています。

新谷氏 コンタクトセンターは、リモート対応可能になり、ロケーションにこだわらない勤務が増えています。従業員のエンゲージメントを高めるには人によるケアが必要で、これまではオンサイトだからうまくいっていたのですが、分散していると難しくなります。しかし、このソリューションは分散業務の現場にもすごく向いていると思います。

それから、営業担当としての効果を感じることは、受注率です。NICEのソリューションを含んだ提案と、含まない提案とを比較した場合、NICEのソリューションを含んでいる方が20%ほど良い結果を得られています。

Mercier おそらく、AIを使いたいと考えるお客様は多いでしょう。しかし、なかなかご自身で適切なAIモデルを作ることができないので、我々のソリューションが有効だと感じ、採用されるのでしょう。NTTマーケティングアクトProCXではAI利用の移行期間だと思いますが、取り組みをすすめることで新たなインサイトを得られるのではないかと思っています。

新谷氏 NICEとNTTマーケティングアクトProCXのパートナーシップの一番大きな意味は、先端テクノロジーとセンター運営ノウハウの融合です。AIのテクノロジーだけあっても、それを使いこなせるコンタクトセンターは少ないでしょう。それはAIが悪いのではなく、効果的な使い方がわからないのです。弊社では運用ルールにテクノロジーを組み入れ、効果が出るまで仕立ててきました。今後、新たなユースケースを展開できるのではと期待しています。

CX(顧客体験)や、応対にこだわりをもってコンタクトセンターを運営したいと考えるお客様にとっては非常に高い価値を提供できるソリューションだと思います。

Mercier まさしく新谷さんがおっしゃるように、このパートナーシップから、新しいユースケースをさらに探索できる機会をいただけたと思っています。先ほど16のモデルを作ったとお伝えしましたが、さらにもっとたくさんのモデルを作って新たな洞察を得ていきたいと思っています。

日本のコンタクトセンターが抱える課題を解消する突破口に

―コンタクトセンター・アワード2022「テクノロジー部門最優秀賞」を受賞されました。どのような反響がありましたか。

元木氏 応対品質をいかに効率的に高めるかは、コンタクトセンター業界全体の課題です。受賞によって「本当にこんなことができるんだ!」という驚きとともに、課題の突破口をお見せできたと思っています。

新谷氏 クライアントの課題解決に取り組んでいくと同時に、NTTグループ内での積極的な利活用にも注力していき、更なる事例を築いていきたいと思っています。

Mercier NTTグループの事例は非常に強力です。ほかのBPOの方々も興味を持たれています。コールセンター業界は変わりつつあり、BPOのビジネスにも変化が訪れています。特に顧客満足度向上のためのデータ分析・活用は非常に重要だと思っています。

NICE Ltd. Vice President, Analytics, AI and Digital Asia Pacific Philippe Mercier

―今後の展望についてのご意見をお聞かせください。

元木氏 コンタクトセンター運営では、改善効果を高めることに力を入れています。そのために社内で「Nexidia活用コンテスト」を実施しようと思っています。評価をするだけでなく、Nexidiaの新しい使い方を探求するためです。エージェントの応対コンテストにもNexidiaを活用していきます。いままでは審査員が応対内容を聞いて審査していましたが、Nexidia導入済みの1000人に対しては、Nexidiaによる評価で1位を決めたいと考えています。このような取り組みを発信していくことで、対外的な認知にもつなげていきたいと考えています。

新谷氏 NICEのソリューションは常に進化し続けるでしょう。その進化したものに我々が寄り添いながら、営業展開していきたいです。より今の時代に求められるもの、例えば雇用の問題などを解決できるような付加価値をこのパートナーシップによって生み出し、お客様との関係を強化していきたいと思っています。

Mercier 弊社は、NTTマーケティングアクトProCXとのパートナーシップに大きな信頼を置いております。その証として、日本での新たなデータセンター開設に投資します。新しい市場を作り、開拓してまいりたいと考えています。

<製品・サービスについて>
NICE Enlighten
顧客エンゲージメントのためのAIフレームワーク。あらゆるインタラクションに対して、顧客満足度の向上につながるエージェントの行動を正確かつ瞬時に解釈して採点。適切なメッセージや対応方法をエージェントに提示する。

NICE Nexidia
ディープラーニング・ニューラルネットワークの技術を利用した対話分析ソリューション。コールセンターのすべてのタッチポイントでの顧客の行動を調査し、顧客とエージェントがより良い会話を展開できるようサポートする。

ONE CONTACT Quality Management
NICE Nexidia/Enlightenをベースに、NTTマーケティングアクトProCXが培った品質管理の日本版汎用モデルや体系的な評価スキームを盛り込んだコンタクトセンター品質管理基盤。